東京電力グループの株式会社PinTが2024年12月にリリースした「ぴんとりWi-Fi」が、気軽に高速インターネット回線を利用したいユーザーから注目を集めている。
「ぴんとりWi-Fi」は5G回線に対応したモバイルルータやホームルータを販売し、光回線が使えない層に向けた新たな選択肢として、スタート1か月で想定以上の申込数を獲得した。
ALL CONNECT MAGAZINE編集部では、株式会社PinT企画本部・電気通信事業部の加藤丈範部長と小澤晟矢氏に、「ぴんとりWi-Fi」誕生の経緯や契約者から寄せられた声、今後の展望についてインタビューを行った。
加藤丈範 氏
Takenori Kato
株式会社PinT 企画本部 電気通信事業部 部長。広島県出身。大手通信会社のグループ企業に入社後、光回線サービスの販売や新規事業の立ち上げなど、通信業界での経験を積む。現在は、通信業界での実務経験を活かし、新たな挑戦に取り組んでいる。趣味は野球観戦(カープ)と、Dre:Voxx(ドリボックス)というツインボーカルで歌やピアノをしている。
小澤晟矢 氏
Seiya Ozawa
株式会社PinT 企画本部 電気通信事業部。宮城県出身。前職では、大手通信会社のグループ企業に入社し、主に光回線のカスタマーサポート業務に従事。現在は電気通信事業部にて、新サービスの企画、運用に携わる。趣味は野球観戦(DeNA)とバンド活動。
「ぴんとりWi-Fi」誕生秘話―光回線が導入できない方をサポートしたい
株式会社PinTでは自社サービスとして、電気やガス事業、光回線事業を運営している。
今回、新たにモバイル回線の「ぴんとりWi-Fi」をスタートさせた理由を聞いた。
編集部:
まずは、「ぴんとりWi-Fi」立ち上げのいきさつを教えてください。
PinT 加藤氏:
自社の光回線「TEPCOひかり」を検討するお客さまから『マンションやアパートで光回線の導入ができない』『開通工事の手間や費用を考えると踏み切れない』といったリアルなお悩みを寄せられることが多くありました。
また、引っ越しが多い方からも『急な転勤などで退居する際に光回線の解約違約金や工事費残債が請求される』とお困りの声も耳にします。
現状として光回線しか選択肢がないことに限界を感じ、工事不要で導入できるサービスの提供を決めました。
編集部:
「ぴんとりWi-Fi」で販売するモバイルルータやホームルータは、光回線のような開通工事は不要なのですね。
PinT 加藤氏:
そうなんです。
端末さえ届けばモバイルルータは電源を入れるだけ、ホームルータはコンセントを挿すだけですぐにインターネット環境が整うのが強みです。
これからの3~5月といった引越しシーズンは光回線の開通工事も繁忙期でなかなか希望通り工事日が取れないという問題もあります。
「ぴんとりWi-Fi」なら発送指定日に端末がすぐ届くので、インターネットを必要としているお客さまの助けになれると思っています。
加藤部長は開通工事の手間が省けてすぐにインターネットが利用できること以外にも、「ぴんとりWi-Fi」は利用者のニーズに応えられると話す。
PinT 加藤氏:
主に外出先でインターネットを利用することが多い方のお悩みとして、『フリーWi-Fiや公衆無線LANは便利だけれどセキュリティリスクの面で不安』という点があります。
都度Wi-Fiの接続設定が必要だったり、速度が遅くなりやすかったりという問題もあり、その点モバイルルータであれば専用回線を使うので安心ですし、外でも自由に高速通信ができるのも利点です。
編集部:
新しいサービスを立ち上げる上で、社内での反応はどうでしたか?スムーズに開発はスタートしたのでしょうか?
PinT 加藤氏:
社内でもこのサービスは必要だという声が多く、スムーズに進みました。
実は構想自体は私が入社する前からあったのですが、卸元や在庫管理の問題で長らく実現できていなかったようです。
企画本部へ私が異動したこともあり、本格的に運用開始に向け動き始めたのは2023年の秋ごろでした。
編集部:
サービス提供を決めてから1年ほど経ってのリリースですが、商品化する上で苦労された部分はありましたか?
PinT 加藤氏:
そうですね、企画立案から顧客管理・請求システムの改修、ホームページ作成や交付書面のフォーマット作り、運用フローなど1からの構築だったので大変ではありました。
しかし、社内だけではなく社外の方からもアドバイスやアイデアを頂いて、多くの人のおかげで無事にリリースできたなという感じがします。
「ぴんとりWi-Fi」命名の理由
株式会社PinTでは電気サービスとして「PinTでんき」を、ガスサービスとして「PinTガス」を提供している。
しかし、今回の新サービスは「ぴんとりWi-Fi」と名付けられている。
編集部:
これまでのパターンで妥当にいけば今回の新サービスも「PinT Wi-Fi」となるのでは?と思ったのですが…
PinT 加藤氏:
新サービスの名前を社内公募いたしました。
弊社の公式キャラクターとして『ぴんとり』がいたので、『ぴんとりWi-Fi』でいこうという意見が多かったのが理由です。
SNSのフォロワー1万人超え!公式キャラ「ぴんとり」にも注目
「ぴんとりWi-Fi」の名前のきっかけにもなった公式キャラクター「ぴんとり」は日本神話の八咫烏(ヤタガラス)をモチーフにしたキャラクターで、しっぽ代わりの「謎のプラグ」やちょんまげのような「色が変わる豆電球」、「どこを見ているのか謎すぎる目」とゆるい見た目とかわいさが特徴だ。
ぴんとりと株式会社PinTの社員がゆるく呟く「ぴんとりと中の人たち」がXとTikTokで展開中だが、「ぴんとりWi-Fi」リリース後の1月22日にはフォロワー数が1万3,000人を超えた。
編集部:
ぴんとりにも注目が集まっていますが、キャラクターのコンセプトやストーリーを教えてください。
PinT 加藤氏:
ヤタガラスは導きの力を持つと言い伝えられているので、ぴんとりにも神通力ですべてのお客様を快適な生活に導きたいという思いが込められています。
困ってる人を見ると放っておけず、一生懸命いろんなことを教えてあげようとするけど実際ヘマばかりしちゃう。
まあ天然ボケな性格というか、親しみやすいキャラクターになっています。
SNSでは『ぴんとりの日常』も掲載しているので、キャラクターぴったりの愛くるしい姿とかくすっと笑える一面も覗いていただきたいなと思います。
「ぴんとりWi-Fi」リリース1か月で担当者の想定を超える「156%」の申し込みを記録
2024年12月16日にリリースした「ぴんとりWi-Fi」だが、広告も打たず販売代理店への周知も最小限だったにも関わらず、当初想定していた以上の申し込み件数が発生しているという。
編集部:
リリースから1か月経って、申し込み状況やお客さまからの反響はいかがですか?
PinT 加藤氏:
実質的な広告みたいなことは何もしておらず、販売代理店さまへの周知も全然してなかったのですが、PinTの公式サイト内のマイページから意外にもお申し込みをいただいている状況です。
本来は「TEPCOひかり」を申し込みしようと思ったけれど、工事面や外では使えないなどの理由で契約を断念する方に向けて訴求する方向で考えていたのですが、モバイルサービスの需要がやはり高まっていると感じます。
編集部:
実際、申込数はどれくらいを想定していたのですか?
PinT 加藤氏:
光回線が契約できないお客さまの受け皿というのが大前提だったので、本当に低めに設定していました。
しかし、実際には公式サイトやマイページからのお申し込みが好調で、当初の計画の156%をいただいているという嬉しい状況ですね。
「ぴんとりWi-Fi」を申し込む人は意外にもPinTのサービス利用者だけではなかった
企画・開発に携わった加藤部長や小澤さんも想定外だった「ぴんとりWi-Fi」の思わぬ好調スタート。
ユーザーに受け入れられた理由には、インターネット回線の契約を検討する上で多くの人が抱える課題が背景にあるようだ。
編集部:
順調なスタートを切ったぴんとりWi-Fiですが、どのような方からの申し込みが多いと感じますか?
PinT 加藤氏:
あらかじめ想定していたとおり、PinTの電気やガスをすでにご利用頂いているお客さまが多いですが、それでもぴんとりWi-Fiを単独でお申し込みされる方も増えているのが意外でしたね。
今後はぴんとりWi-Fi単体でもお申し込みいただけるキャンペーンなども打ち出していきたいです。
編集部:
御社は東京電力グループですが、エリア的に関東からの申し込みが多いなど地域的な特徴はありますか?
PinT 小澤氏:
いえ、申し込みエリアも関東に限らず、思った以上に全国から申し込みが来ています。
PinT 加藤氏:
工事までの日数が長くかかってしまうなど、光回線導入のハードルが高い場合があるので、即時開通できるホームルータやモバイルルータのニーズが高いのかもしれません。
編集部:
ぴんとりWi-Fiを使われたお客さまからの評判などは届いていますか?
PinT 小澤氏:
そうですね。
『機械音痴なので届いてコンセントに挿してすぐ使えるのがとても安心』とか、モバイルルータを持ち運ぶことで『スマホのデータ通信も安いプランにしてコストを抑えられる』といった声を頂戴しております。
競争の激しいモバイルルータやホームルータ業界に参入した「ぴんとりWi-Fi」の強み
近年インターネット環境が生活するうえで必需品となっていることも踏まえて、モバイルルータやホームルータを含めた通信業界での競争は激しさを増している。
新たにモバイル回線の分野に新規参入した「ぴんとりWi-Fi」は、競合他社とどのようにサービスの差別化を図っていくのか聞いた。
編集部:
ぴんとりWi-Fiが新たに通信業界でサービスを打ち出すうえでどのような取り組みをされていますか?
PinT 加藤氏:
現在、ぴんとりWi-Fiリリースにあわせて、公式キャラクターのぴんとりと絡めたキャンペーンを展開中です。
第二弾、第三弾と具体的な計画はまだできていませんが、またキャンペーンを考えていけたらと思います。
今後は親会社の東京電力エナジーパートナーや、グループ企業とも協力して展開していけるといいですね。
編集部:
ぴんとりWi-Fiの価格面では、他社と比べてどのような違いがありますか?
PinT 加藤氏:
価格帯としては他社サービスと比べても平均的ですが、強みとして当社のPinTでんきやPinTガスなどのサービスと契約・請求を一本化できるという点があります。
電気とガス、そして光回線やモバイル回線をすべて一括して同じところで契約でき、引き落としも一括で行える。
全部まとめて請求になる分に対して、ポイントが貯まるという特典を用意しています。
「ぴんとりWi-Fi」で貯まる「PinTポイント」でお得感を狙う
「ぴんとりWi-Fi」のメリットとして、請求金額に対してPinTポイントが貯まる。
PinTポイントはサービスの利用料金の合計にあわせてポイント還元率がアップするシステムのため、電気やガスも一緒に契約していれば100円につき最大7ポイントが還元される。
PinTポイントは請求料金の支払いに1ポイント1円で使えるほか、VポイントやPayPayなどの他社ポイントやセブンイレブン、サーティワンアイスクリームなどで使えるギフト券とも交換が可能だ。
「ぴんとりWi-Fi」を契約するなら、電気やガスもあわせて乗り換えてみるのもおすすめだという。
「ぴんとりWi-Fi」今後の目標はお客様に愛されるサービス
「ぴんとりWi-Fi」を今後運営していくうえで、どのような目標を掲げているのか聞いた。
編集部:
ぴんとりWi-Fiの今後の目標としてはどのようなところにありますか?
PinT 加藤氏:
今後は最新技術やトレンドの変化に応じて、ぴんとりWi-Fiのサービスや端末も常に進化していくと思います。
ぴんとりWi-Fiも今後アップグレードしていきながら、公式キャラクターのぴんとりとともにサービスの認知と顧客満足度の向上を目指して、お客さまに愛され、成長していきたいと思っております。
「光回線+Wi-Fi+電気・ガス」-ライフライン事業としての進化も目指したい
株式会社PinTは新サービスの提供や既存サービスの見直しなど、顧客のニーズにあわせて変化を止めない。
株式会社PinTの企業としての展望も聞いてみた。
編集部:
今後はぴんとりWi-Fiだけでなく、電気やガスや光回線といったインフラ全般を担っていくというイメージでしょうか?
PinT 加藤氏:
そうですね、将来的には新たな市場への可能性も探りながら、お客様のライフライン全体を提供していけたら。
自社の電気やガスと組み合わせれば、ぴんとりWi-Fiは単なる通信サービスを超えた価値を持つと思うので、既存ユーザーの利便性を向上できるようさらに模索し続けていきたいです。
新しい選択肢としての「ぴんとりWi-Fi」、今後の展望に注目!
株式会社PinTが新たにスタートさせた「ぴんとりWi-Fi」はリリース直後から担当者の想定を超えた反響を得ている。
今回のインタビューでは、光回線の導入の手間を考えて尻込みしていた人や外出先で自由にインターネットを利用したい人など、ユーザーのリアルな悩みやニーズに寄り添って企画・開発をしたことがヒットの理由になっているように感じた。
「公式キャラクターのぴんとりとともに、今後もお客さまに愛されるよう企業努力を続ける」と語る株式会社PinTの動向に、引き続き注目していきたい。
会社概要
名称:株式会社PinT
設立:2018年4月2日
代表取締役:木幡 禎之
所在地:〒101-0041 東京都千代田区神田須田町1-16-5 ヒューリック神田ビル4階
関連会社:東京電力エナジーパートナー株式会社
企画 / 荒木 孝博
取材・撮影 / 熊谷 久
文 / 編集部 川口 沙織