“デジタルの総合病院”を掲げる「日本PCサービス」にパソコン修理業界の今とこれからを聞く

日本PCサービス_PCホスピタルインタビュー
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日本でパソコンが一般家庭にも広く普及し始めた2000年代初頭から、パソコンの修理やサポートを担う「日本PCサービス株式会社」。

コロナ禍でさらに高まったインターネット需要により利用者が急増し、グループで約300の訪問拠点と、全国130店舗以上のインフラを有し、この20年での業績は右肩上がりとなっている。

DXの推進で会社や家庭でもIoT化が進むなど、インターネット社会の変革期に日本PCサービスはどのように利用者と向き合っているのか。

日本PCサービス立ち上げ直後に入社し、事業拡大の第一線を走ってきた営業本部の奥田 恵一郎氏にパソコン修理業界の今と未来を聞いた。

インタビュー企業紹介

奥田 恵一郎 氏
Keiichirou Okuda

日本PCサービス株式会社 営業本部 営業企画室 執行役員

千葉県出身。高校卒業後、バンド活動をしながらホテル勤務。パソコン・インターネットが普及した90年代後半、プログラマーとしてシステム開発会社に入社。日本PCサービス㈱ 創業者の家喜と出会い、ビジョンに共感。2006年、同社に入社。システム開発・パソコンサポート職を経験した後、事業拡大に伴い東京本部を立ち上げに携わる。その後、営業責任者として、量販店・パソコンメーカーとの提携を実現。現在に至る。

目次

日本PCサービス立ち上げ当初は個人向けのアフターサービスがまだ少なかった

日本PCサービスの概要

パソコンをはじめ、IoT機器・スマホ・タブレットなど、生活に欠かせないネットワークにつながる機器のお困りごと全般を解決する独立系企業。
日本PCサービスの保有する全国約400拠点のインフラを強みに、訪問・持込・宅配・遠隔で、困ったときに全国・最短即日・年中無休でお家やオフィスのデジタルのお困りごとを解決する「デジタルの総合病院」を掲げる。
主な提供サービスは「PCホスピタル」や「スマホスピタル」、「ゲームホスピタル」など。

日本PCサービス創業者の家喜信行氏は大学卒業後、翼システム株式会社に入社。

フィールドエンジニアを経て、営業のトップセールスに。

自身の経験から2003年に独立し、有限会社マネージメントクリエイティブ(現日本PCサービス株式会社)にてパソコントラブル解決サービスを創業した。

日本PCサービス立ち上げ時はどのような時代背景があったのか、奥田氏に創業当初の話を聞いた。

編集部:
まずは日本PCサービスの立ち上げの経緯から、お伺いさせていただきます。

日本PCサービス 奥田氏:
もともと社長の家喜が自動車業界向けのパッケージソフト販売を行う会社に勤めていた流れで、今度はパソコン版の修理サービスを作ろうと起業したのが始まりです。

日本PCサービス提供資料①
引用:日本PCサービス提供資料より

日本PCサービス 奥田氏:
当時はパソコンの購入や所有が個人でも一般的になりつつありましたが、保守や修理などのサポートがほとんどなく、アフターサービスが受けられないということが多かったようです。

引用:日本PCサービス提供資料より

日本PCサービス 奥田氏:
前職で家喜はシステムを売った後にお客さまがほったらかしになるのが嫌だと、サポートやアフターサービスにお客さまからのニーズがあると感じて、パソコンの修理やサポートをメインに行おうと決めたようです。

編集部:
当時のパソコン業界ではアフターケアなどのサービスは少なかったのでしょうか?

日本PCサービス 奥田氏:
法人向けにはパソコン向けの保守などを行う会社もありましたが、個人向けには知る限りはほとんどありませんでした。

今でこそパソコンのホームサポートの認知度は高くなっていますが、当時は自宅まで駆けつけてサポートを行うサービスはトイレや鍵のトラブルくらいしかなかったですね。

引用:日本PCサービス提供資料より

お客さまの満足度を上げるために社員教育を徹底した

当時はほとんどなかった個人向けのパソコンサポートに着目した日本PCサービスだが、初めての事業はどうしても集客力やお客さまからの信用が不足する。

日本PCサービスでは利用者の満足度を上げるために、技術面だけでなく接客面でも社員教育に力を入れたという。

編集部:
パソコンのサポートサービスであるPCホスピタルに舵を切ってから、事業を拡大する中で大変だったことはなんですか?

日本PCサービス 奥田氏:
お客さまに利用して頂いて満足度を上げるためには、期待値を超えるサービスをしっかり提供しなければならないという部分がありました。

そのためには、技術力はもちろんですが接客力もしっかりメンバーに教育していくというところが特に大変でしたね。

社内教育ができていないと人も増えていきませんし、人が増えなければその下も育たないので、社員の教育や育成は大事にしています。

編集部:
なるほど。日本PCサービスでは対面でのサービスが主ですから、技術以外の面でも力を入れていらっしゃるのですね。

日本PCサービス 奥田氏:
そうですね、当時は入社してくるメンバーもどちらかというとパソコンマニアな方が多くいて、修理のスキルや技術力的にはむしろ私より高いのではないかという社員もいました。

だから研修も技術的な面だけでなく接客面にも力を入れて、ただの修理ではなく「いかにお客様にしっかりと満足いただけるサービスを提供するか」が大事だと伝え続けています。

資格取得で安心を目に見える形で届ける

技術面ではサポートを担当する全社員に「パソコン整備士」の資格を取得させることで、スキルの安定化を図っている。

日本PCサービス 奥田氏:
特定非営利活動法人「IT整備士協会」が主催する「パソコン整備士」の資格をスタッフには取得してもらうことで、お客さまに安心感を持ってもらい、品質を担保する働きを行っています。

編集部:
研修期間はどれくらいですか?

日本PCサービス 奥田氏:
知識量や経験などによって多少の誤差はありますが、しっかりと長期間の研修を行うことを基本としているので、おおよそ二ヶ月ほどの期間をかけて研修を行います。

研修ではPCの分解をして内部構造を理解し、実際の現場での技術・接客の両面での研修も行います。

デビュー後も、お客さま宅にも最初はベテランスタッフが同行して、何かあった際にもしっかりと対応ができる体制でサポートを行っています。

その上で問題がなければ、1人でお客さまの元へ訪れることが認められます。

日本PCサービスでは利用者に対して「お客さまアンケート」を配布し、本社へ直送する仕組みを取っている。

引用:パソコン修理・データ復旧 サービスの特徴 PCホスピタル|日本PCサービス

アンケートで寄せられた意見や要望を基に、お客さま宅で荷物を置く際に敷物を持参したり、時間作業料金を撤廃したりとサービス改善を行ってきた。

技術面での向上と対面でのコミュニケーションスキルの徹底、そしてお客さまの声に耳を傾ける努力が、今日の日本PCサービスの顧客満足度に大きく繋がっていると言える。

おうちのデジタル機器を全部任せられる「総合病院」を目指す

日本PCサービスでは2019年にスマホやゲーム機の修理等を行う「スマホスピタル」をM&Aによりグループに迎え入れ、持ち込み修理ができる店舗も全国100店舗以上に拡大している。

「デジタルの総合病院」を掲げるうえで、パソコンだけでなく、デジタル機器やインターネットサービス全般のサポートができるインフラを確立してきた。

編集部:
デジタルホスピタル
というブランドに至った背景をお伺いさせていただきたいです。

日本PCサービス 奥田氏:
日本PCサービスでは、お客さまやオフィスのデジタル・ネットワークインフラのライフサイクルを包括的にサポートし、パソコンやスマホ、ゲーム、ネットワークまで、デジタルで困ったら私たちを想起いただけることが世の中の当たり前になるサービス文化創りを目指しています。

個人・法人を問わず、デジタル機器の修理やトラブル解決をきっかけに接点を持ち、必要なタイミングで最適な提案を行うことで、デジタル・ネットワークで困ったときの身近な「かかりつけ医」のような存在として皆さまを支えられるように「デジタルホスピタル」としてDX社会で生まれる課題を解決しています。

日本PCサービスでは2023年9月~2024年8月の1年間におけるグループのサポート実績が、年間42万件以上を超えた。

引用:日本PCサービスの強み|訪問/電話/リモートサポートの日本PCサービス株式会社

訪問サポート対応件数は91,390件、店舗持込サポート対応件数は主にスマホ・タブレット・ゲーム機等で118,599件と合計約20万件の利用がある。

また、電話やリモートでのサポート、法人向けのサポートサービスや代行設定サポートも含めるとその倍の利用があったという。

「社員が最短即日訪問できるサポート力」が強み

日本PCサービスに他社との差別化や違いについて聞いた。

編集部:
様々な修理業者がいる中で、競合他社と比較した時の日本PCサービスの強みはどのようなところにあるのでしょうか?

日本PCサービス 奥田氏:
パソコンに限らず、お客さまのご自宅に伺って修理を行う業者との大きな違いは、技術者でもある正社員が現地まで行ってお話を聞いて修理まで行うという部分です。

初期設定だけサポートするのでも、話だけ聞いて後日技術スタッフが伺うというのでもなく、正社員が故障や不具合の原因をその場で分析した上でトラブルのサポートから修理まで行うというところが強みです。

他社では技術担当が派遣だったりバイトだったりと対応力や技術的なレベルにもバラつきが出ることも多いので、呼ばれてすぐに行くのが無理だったり、日程調整から入ったりということもありますが、弊社は年中無休で電話を受けて最短当日に行けるのが違いですね。

スーツを着用した正社員がデジタル全般を何でも解決します!というスタンスでお客さま宅にいつでもお伺いでき、作業まで行えるサービスで言うと、競合他社と言えるところがほとんどないという認識です。

時代の動きと共に変化し続けるパソコン業界

インターネット業界では2020年の春頃から新型コロナウイルスによる外出制限やリモートワーク・オンライン授業の影響により、パソコンの利用者やインターネットサービスの契約者が爆発的に増えた印象がある。

編集部:
個人的にはコロナ禍のタイミングでパソコンの購買需要が高まったイメージがありますが、パソコン修理の市場としてもやはり同じ時期にニーズは上がってきたのでしょうか?

日本PCサービス 奥田氏::
コロナ禍のタイミングで関連して発生したPCホスピタルの需要はどうだったかと言われると、テレワークやICT教育が加速したことで、法人からの環境構築などは増加傾向にありました。

やはり自宅でお仕事される方が急増し、新しくパソコンを購入した方が増えたことで新規の設定の依頼やネットワークの設定やトラブル相談が増えた時期でした。

「家で仕事をしていたらパソコンが動かなくなってしまった」とか、「会社に指定されたソフトを入れたけど動かない」とか、そういったトラブル等の相談もありましたね。

編集部:
コロナ禍で問い合わせや利用者が増えたタイミングで、一番多かった内容というのはどういうものでしたか?

日本PCサービス 奥田氏:
コロナ禍で増加したのが、第1波の際のテレワークニーズによるパソコンやインターネット環境の設定関連の相談ですね。

また、GIGAスクール構想による学習用端末や企業向け端末のキッティングも急増した時期でした。

幅広いデバイスやケースに対応

デジタルデバイスやインターネットサービスに関しては、技術や内容も日々進化している。

増え続けるデバイスやトラブルの多様化に、日本PCサービスはどのように対応しているのだろうか。

編集部:
高性能の機器なども増え、常にアップデートしていかないと修理する側も追いつかない部分があるかと思いますが、人材の育成などで力を入れてらっしゃるポイントはありますか?

日本PCサービス 奥田氏:
確かに今は新しいデバイスが続々と増え、パソコンなども薄く、小さくするという風潮になっていますから、機器の分解作業一つとっても、以前とは異なり複雑な工程が必要となる場合もあります。

私が入社した20年ほど前はデスクトップパソコンが中心だったので、分解しやすかった印象がありますが時代と共に変化しています。

研修の時には今のパソコンの仕組みを理解してもらうために、自分でパソコン作らせるという取り組みも行っていました。

現在も新たな機器の情報などは社内で連携し、作業員が対応したことがない機器であったとしても全国各地のスタッフから情報が集まります。

スタッフが自らサポートメニューを考えて、これまで対応できていなかった作業を全国的に取り入れることもできました。

より多くのお客さまに満足していただけるように知識の共有が日々行われています。

編集部:
今後はサービス面でどのようなニーズがあると思われますか?

日本PCサービス 奥田氏:
パソコンだけでなくデジタル機器全般のサポートを行なっているので、例えばIoT関連の機器であったりロボットだったり、今後一般的に使われていくであろう機器へのサポートは今後も必要性が高まっていくと感じています。

機器の修理だけではなく、ロボットなども一般家庭などに広まっていった時に何の設定もなくすぐに使えるものではないので、本当にデジタル機を必要としている方々がハードルを感じることがないようにサポートさせていただきます。

デジタル機器の普及により需要は増えていくのでは思っています。

訪問サポートや店舗への持ち込みだけでなく、電話やリモートでのサポートなど、お客さまにあわせて幅広く対応します。

DXやロボット化が加速する未来に向かって

2025年2月:日本PCサービス東京本社にて撮影

今後も国内外では交通や物流、製造業や教育など幅広い分野でDXが推進され、新しいサービスやデバイスが出てくるだろう。

日本PCサービスでは来る未来に対して、どのような展望を描いているのだろうか。

日本PCサービス 奥田氏:
DX化やクラウドサービスは認知度は徐々に高まってはいますが、結局まだ多くの業種事業で利用自体が追いついていないという印象です。

新しいサービスやDXをしっかり世の中に浸透させていくと考えるとやはりサポートが必要になってくるので、その分野を弊社にお任せいただけるようにと思っています。

DX化やデジタル機器を導入される企業にも実際にご提案をさせていただいていたり、デバイスやIoT機器を販売したいと考えている事業者とも連携をとり、設定のサポートやアフターケアはお任せいただくような取り組みを進めてまいります。

編集部:
創業当初から修理だけではなく、アフターケアやサポートにも力を入れているというのは変わりませんが、新しいデバイスが増えていけばいくほど、御社のサービスも一緒に増えていくというイメージですね。

日本PCサービス 奥田氏:
テレビがインターネット繋がるようになったり、スマートフォンも皆さん今では当たり前のように使われていますが、これだけ普及するとは思っていなかったという方もいると思います。

今後も対応すべきデバイスやサービスは時代の流れと共に変化していくと感じています。

これから家電もどんどんインターネットに繋がり、ご家庭のデジタル化が進む分、デジタルに関係するものは全て弊社で対応していくスタンスに変わりはないです。

今後はデジタルの総合病院としての認知を上げていきたい

編集部:
日本PCサービスの今後の課題としては、どのようなものがありますか?

日本PCサービス 奥田氏:
DXが進みデジタルに対する修理やサポートの需要が高まる一方で、パソコンやインターネットサービスに対するサポート自体の認知が低いと感じています。

例えば、家の鍵とか水回りでトラブルが起きた時はどこに連絡するとなるとイメージがつきやすいですが、パソコンやインターネットで困ったらどこに連絡するとなるとほぼメーカーや回線業者、購入した家電量販店という印象です。

デジタルに対するトラブルには、日本PCサービスの「デジタルの総合病院」があるという認知度を上げていく部分が大きな課題だと思います。

近い将来、職場や学校、家庭内など私たちの身近にはさらにデジタルが深く関係していくだろう。

インフラとも言えるインターネット環境やデジタルデバイスでトラブルが起きた時、かかりつけ医のように気軽に安心して相談できるサポートを日本PCサービスは提供している。

モノやシステムのデジタル化が進む中、日本PCサービスでは技術だけでなく対面でのサポートや人でしか成しえない接客力にもこだわっているのが印象的だった。

会社概要

名称:日本PCサービス株式会社
設立:2001年9月
代表者:取締役社長 家喜 信行
本社所在地:大阪府吹田市広芝町9-33 プレシデントビル

企画・取材・撮影・監修 / PC Shot編集部
文 / 編集部 川口 沙織

記事の作成・公開時期により情報が最新ではない可能性があります。最新情報をお届けできるよう努力しておりますが、サービスの最新情報は必ず公式サイトを確認するようにお願い申し上げます。

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執筆/編集

ALL CONNECT MAGAZINE編集部です。回線の販売員やカスタマーサポートに従事しお客様の「わからない」を「わかる」に変えるお手伝いをしてきました。この経験を活かし、複雑な通信サービスもわかりやすく、安心して選んでいただける情報をお届けしています。ALL CONNECT MAGAZINEで役立つ情報をぜひお楽しみください。

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