東北電力グループのサービスとして、2023年10月に提供を始めた「東北電力フロンティア光」。
地方電力会社グループが光回線サービスを始めたその背景には、同グループが掲げるスローガン「より、そう、ちから。」、そして「10ギガの高速のインターネット回線を東北に広げたい」という想いがあった。
今回、東北電力フロンティア光を立ち上げた「東北電力フロンティア株式会社」マーケティング本部の事業企画部リーダー田村崇明氏、サービス開発部副部長・稲持雄也氏、 同部リーダー・古関俊介氏に サービスに込めた想いや目標を伺った。

田村崇明 氏
Takaaki Tamura
東北電力フロンティア株式会社 マーケティング本部 事業企画部 リーダー。青森県出身。東北電力に入社後、販売部門での業務を中心に携わり、2021年より、東北電力フロンティア株式会社においてサービスの企画や運用、電力小売のアライアンス業務を担う。趣味は高速光回線で海外サッカー(イングランドプレミアリーグ)を視聴すること。

稲持雄也 氏
Yuya Inamochi
東北電力フロンティア株式会社 マーケティング本部 サービス開発部 副部長。新潟県出身。東北電力に入社後、経営企画や販売部門での業務を中心に携わり、2021年より、東北電力フロンティア株式会社においてサービス企画や運用を担う。趣味は鉄道旅行。

古関俊介 氏
Shunsuke Koseki
東北電力フロンティア株式会社 マーケティング本部 サービス開発部 リーダー。福島県出身。東北電力に入社後、技術部門での業務を中心に携わり、2023年より、東北電力フロンティア株式会社においてサービス企画や運用を担う。休日は子供と一緒に遊ぶことで疲れはとれないが癒されている。
光回線サービスへの顧客ニーズは提供前から感じていた

東北電力フロンティアは東北電力の100%子会社として2021年4月に設立された。
東北電力グループとして、東北電力フロンティアが新たに光回線サービスを提供するに至った経緯を聞いた。
編集部:
東北電力フロンティア光をリリースされた背景や経緯をお聞かせください。
東北電力フロンティア 稲持氏:
2016年の電力小売全面自由化を受け、電力業界での競争が激化する中で今後も東北電力グループをお選び続けていただくためには、お客さまの多様化するニーズにお応えする必要があります。
東北電力グループとして「環境にやさしい電力を安価で安定的にお客さまにお届けする」というのはもちろんですが、「お客さまの快適・安全・安心な暮らしにお役立ちするサービス」をより機動的にお届けしていけるように、まず「東北電力フロンティア」が立ち上げられたという最初の背景があります。
編集部:
東北電力フロンティア設立から、東北電力フロンティア光をリリースするまでの流れはどのようなものでしたか?
東北電力フロンティア 稲持氏:
東北電力フロンティアとして、光回線サービスの提供よりも先に、当社が提携する地元のファイナンシャルプランナーと家計見直し等のご相談ができる「トキメクくらしの家計ご相談サービス」を提供していました。
お客さまから実際に家計にまつわるお話をお聞きする中で、「電気料金だけに留まらない家計の固定費のお悩み」に関する声が多く寄せられていまして。
最近の物価上昇などの背景もあり、電力以外の通信料金などの家計の固定費の抑制にお役に立つサービスへのニーズを感じていました。
お客さまの声によりそったサービスという視点で、東北電力フロンティア光の提供前に、一定の手応えを感じていた部分はあります。
編集部:
東北電力フロンティアが設立された2021年頃はちょうどコロナ禍で、インターネット人口が増えた時期でもありましたよね。
東北電力フロンティア 稲持氏:
まさにコロナ禍真っただ中という時期でした。
お客さまから、リモートワークであったり、オンラインでの動画視聴やゲームなど、「高速で快適なおうちのインターネット環境を求める声」が多いことも認識していました。
このようなお客さまの声から、10ギガの高速のインターネット回線を東北・新潟に広げたいという想いが生まれたのも、サービス提供に至った理由です。
グループ企業の従業員もサービスを後押し

東北電力フロンティア光リリースについて具体的に検討をスタートさせたのは、2022年の12月頃からだという。
約10ヶ月間の検討と開発を経て、2023年10月12日にサービスの提供を開始した。
畑違いのインターネット業界への参入に、社内や親会社である東北電力からの反対などはなかったのだろうか。
編集部:
東北電力フロンティア光のサービス提供開始にあたり、親会社の東北電力からはスムーズにご理解いただけたのですか?
東北電力フロンティア 田村氏:
「お客さまの声によりそいたい」という想いをベースに具体的検討をスタートさせていますので、グループ企業を含め、快くご理解・ご協力をいただきました。
社外のパートナーの方からもいろいろと教えていただき、リリースにこぎつけることができました。
実際に東北電力グループの従業員の方にもご利用いただき、後押しをしていただいていることは、大変ありがたいと思っています。
ただ、私は、東北電力に入社し、これまで電力の販売の仕事をしていた人間なので、2023年10月から、光回線のサポートや問い合わせを受けなければいけないという苦労もありました。
まずは勉強というか、日々チーム内で情報を共有して、個々のスキルや知識を強化していったのが最初に苦労したことでもあり、お客さまの声をお聞きしお答えしながら、強くなっていった部分もあります。
東北電力フロンティア光が目指したのは「よりそうサービス」と「10ギガの拡大」
東北電力フロンティア光の構想段階でも柱となったのは「お客さまのニーズによりそう」というモットー、そして「10ギガサービスを東北に広げたい」という2つの想いだった。
「お客さまのニーズによりそいたい」という想い

編集部:
東北電力グループ全体としてのスローガンも「より、そう、ちから。」でいらっしゃいますね。
東北電力フロンティア 古関氏:
「お客さまにより沿う」「地域に寄り添う」という意味なんですが、どの職場でも、日々の仕事の中で、「よりそっていきましょう」というのはよく言われます。
「その仕事、よりそってるかい?」というワードも、社内での会話でよく出てくるフレーズです。
編集部:
常にスローガンを意識して、皆さんお仕事をしていらっしゃるのですね。
具体的には、どのような形でお客さまによりそっていらっしゃいますか。
東北電力フロンティア 田村氏:
光回線を契約されているお客さまや検討されている方からは、ご自身の現在の契約状況をよく把握されていなかったり、「現在いくら支払っているかよく分からない」「Wi-Fiってなんだっけ?」といったお声も多く聞かれます。
そういった「インターネットには詳しくない」とか「スマホについてよく分からない」という方がお問い合わせを下さった時には、真摯に対応して、まずご理解をしていただくということを重視して、お客さま対応を行っています。
東北電力フロンティア光ではインターネットやスマホに対する設定や接続への不安をサポートするため、実際に契約者宅で設定を代行したり、相談を受けたりするサービスも用意している。(有料)
10ギガサービスの拡大を目標に
最大10Gbpsの高速プラン・10ギガの光回線サービスは数年前まで東京都や大阪府など、日本全国でも一部の都市部でしか開通していなかった。
しかし、2023年からは、東北地方でも宮城県で提供が始まった。
東北電力フロンティア光も2023年10月12日のリリース時よりまずは宮城県から、2024年4月18日からは福島県と山形県でも「プレミアム10ギガ」を提供している。
編集部:
東北電力フロンティア光を立ち上げた理由として、「10ギガの高速のインターネット回線を東北・新潟に広げたい」という想いもありましたが、そのあたりも詳しく教えてください。
東北電力フロンティア 古関氏:
東北・新潟に10ギガサービスを普及させたいという中で、まずお客さまの中にはそもそも「10ギガというものが何か?」ということが上手く伝わっていない方も多いと感じました。
10ギガは「速さ」なのか「容量」なのか何なのか?という質問も良くありますね。
そういったお客さまに弊社から「10ギガは速度のことですよ」などと丁寧にお伝えしていくことで、徐々にご理解していただける方も増えていき、お申し込みも多く頂けるようになってきたという印象です。
編集部:
今お申し込みいただいているお客さまのうち、10ギガでの契約はやはり多いですか?
東北電力フロンティア 古関氏:
そうですね、過半以上は10ギガプランのお申し込みです。
東北では、戸建てのお客さまも多く、ご好評をいただいております。
やはり、実際に10ギガをご契約いただいたお客さまからは「回線が速くなった」「家庭のインターネット環境が見直された」という嬉しいお声も耳にするようになってきました。
ただ、まずは、やはり認知という部分で、10ギガを知らなかったお客さまにもわかりやすく広めていこうという部分は、まだまだ課題ですし、引き続きの目標にもなっています。
IT関連のサービス全般に言えることだが、よく耳にする言葉でも実際のところ何かよくわかっていなかったり、自分にとって本当に必要なものなのか理解できていなかったりする人も多い。
他社光回線事業者でも声高に販促活動が盛んな10ギガサービスだが、東北電力フロンティア光からは、地域のお客さまによりそい、本当に必要だと思えるものを納得したうえで利用してほしいという熱い想いがうかがえる。
地道でも着実に。足を使ってのPR活動が実を結ぶ
東北電力というバックボーンもあり、知名度はそれなりにあるように思う東北電力フロンティア光だが、契約者を増やすための宣伝活動は、意外にも地味なものも多かった。
まずはインナーから知名度を高める
編集部:
サービスの認知度を広げるためにいろいろ活動されていらっしゃると思うのですが、たとえばどのようなプロモーションをされてきたのでしょうか?
東北電力フロンティア 田村氏:
リリース初月は、まず東北電力の本店の食堂で昼休憩の時間帯などを狙って「相談会をやってます」と呼びかけたり、従業員に向けてチラシを配ったりしていました。
東北電力の従業員は、比較的、保守的な方が多い気がするので、すぐに飛びつくという感じではなかったですが、リリースしたばかりの時は、まずはインナーから地道にという想いでやっていましたね。
編集部:
東北電力の従業員の方に向けてまずはPR活動を始めて、その成果はどうでしたか?
東北電力フロンティア 田村氏:
フロンティア光にご契約していただいた従業員は実際に使ったうえで良い感想を寄せてくれて、自らの職場での営業先など社外の方にも勧めてくれるようになりました。また、サービス改善の前向きなご意見もいただき、大変ありがたいと思っています。
東北電力グループの電力契約者に向けたアピールも欠かさない
編集部:
東北電力の電力を契約されているお客さまにはどうですか?
東北電力フロンティア 古関氏:
東北電力の電力契約者さまには、直接チラシをお配りしたり、メールの配信を行ったりすることで、認知度を高め、ご契約さまを増やす努力をしています。
編集部:
チラシやメールからのお申し込みも多いですか?
東北電力フロンティア 古関氏:
そうですね、それなりにいらっしゃいます。
ただ、パッと見て「あ、インターネットのことか」となって、自分には関係ないとなる方ももちろんいらっしゃいますし。
メールも、開封率などももちろん分析していますが、「何かお客さまにお困りことはないか?」という目線で、タイミングや時期を見計らいながら「相談してみませんか?」というようなメールをお送りし、その時に反応のなかったお客さまでも次のメールでは反応があるかもしれないと意識して、試行錯誤しています。
例えば「Wi-Fi」という言葉であったり「インターネット」という言葉だったり、そういった言葉から入っていく中で、「これって東北電力グループがやっているインターネットサービスの東北電力フロンティア光なんだ。どんなものか見てみよう」という興味を惹くストーリーができていくといいな、と考えながら、アピールを続けているという感じですね。
編集部:
リリース開始から約1年半ですが、契約者数は順調に増えていますか?
東北電力フロンティア 古関氏:
はい。目標となるご契約件数を掲げて取り組んでいますが、社内の計画通りに順調に進捗しているといったところです。
東北電力フロンティア 田村氏:
ご契約者さまからも「通信料金が安くなった」とか「通信速度が速くなった」と言ってくださる方も増えてきたと思います。
ご検討されている方からも「10ギガが契約できるのならぜひ!」と仰っていただくこともあり、認知が広がり、受け入れられはじめていると感じます。
東北電力フロンティア光の強みはやはり電気×光回線のセット割引

東北をメインに光回線事業者として展開する東北電力フロンティア光だが、数ある他社インターネット事業者と線引きする独自のサービスや強みはあるのか聞いた。
編集部:
他社の光回線もたくさんありますが、差別化という部分ではどのような取り組みがありますか?
東北電力フロンティア 稲持氏:
東北電力グループの電力をご契約、ご愛顧いただいているお客さまの家計の固定費の抑制にお役立ちし、快適な暮らしを送っていただきたいという想いがベースにあるので、差別化としては「電気とのセット割引」という部分での訴求に力を入れています。
東北電力グループの自由料金プランの電力をご契約いただいている方には、「東北電力グループでんき&ひかりセット割」をご用意しています。
「電力会社がインターネットサービスをやるんだから、セットでオトクにしたいよね」というのは構想時点からありましたし、それを形にしたというところです。
実際に電気とのセット割があるから他社から東北電力フロンティア光に乗り換えたい、契約したいという方も多くいらっしゃいますね。
東北電力フロンティア光では、東北電力の自由料金の電気料金プランまたは東北電力フロンティアの電気料金プランと同時に利用することで「東北電力グループでんき&ひかりセット割」が適用され、月額料金を割引く。
「プレミアム10Gプラン」であれば月額6,050円から730円が割引され、月額5,320円となる。
最大1ギガの「スタンダードプラン」では、戸建て・集合住宅ともに毎月400円の割引が適用される。
プレミアム10ギガプランは、割引によりスタンダードプランと同額で利用でき、集合住宅でもスタンダードプランは4,000円以下で光回線が利用できるため、お得度は高い。
また、東北電力フロンティア光ではプレミアム10ギガプランの基本工事費の44,000円が実質無料になるキャンペーンも実施中のため、初期費用をかけずに光回線の導入ができる点も契約者増加の理由となっている。
東北電力フロンティアの「くらしを彩るサービス」
東北電力フロンティア光を運営する東北電力フロンティアでは、電力小売を中心に、インターネットサービスのほか、様々な事業を「くらしを彩るサービス」として提供している。
編集部:
今後、東北電力フロンティアとしてお客さまにどういうサービスを提供していきたいですか?
東北電力フロンティア 田村氏:
まず「電力小売」を中心に、「お客さまの快適・安全・安心な暮らしを支える企業」を目指していけたらと思っています。
そのためにはやはり、「お客さまの声によりそっていく」という部分が大事だと感じていますので、世の中のトレンドや技術の変化に応じて常にサービスを進化させ、お客さまの生の声を取り入れたサービスを提供していけたらと考えています。
最近力を入れているのは、東北電力ソーラーeチャージというグループ企業で、新築向けに、初期費用ゼロで太陽光や蓄電池を提供する「あおぞらチャージ」というサービスがあるのですが、「あおぞらチャージ」で環境にやさしい電気を賢く使われようとしている新築のお客さまにも、積極的に東北電力フロンティア光をお勧めしていきたいですね。
編集部:
御社のホームページを拝見すると、「くらしを彩るサービス」として家計や相続に関する相談サービス、保険、カーリースなどのサービスもあります。
東北電力フロンティア光 稲持氏:
そうですね。東北電力フロンティア光の立ち上げのきっかけにもなった「トキメクくらしの家計ご相談サービス」は引き続きニーズが高いですし、マネーセミナーなども行いながら、より一層、事業として成長し、お客さまのお役に立てるよう取り組んでいます。
編集部:
東北・新潟の豊かな自然を生かしたアウトドア関連のサービス、子どもの登下校見守りサービスなど、地域に密着したサービスもありますね。
東北電力フロンティア 稲持氏:
そのあたりの事業は「コミュニティサポート」と呼んでいるのですが、東北・新潟に根ざす企業として地域課題の解決や地元を盛り上げたいという想いがあります。
アウトドア関連の事業は、社内提案がきっかけで始まり、最近では、法人様のイベントのご用命や、恋活に結びつけたイベントの主催などで好評を得ており、事業として着実に成長しています。
東北電力フロンティア 古関氏:
地域のお祭りにいわゆる「投げ銭」をして応援するギフティングサービス「東北サポーターズ」も面白く、チャレンジングなサービスだと思っています。
東北・新潟には、たくさんのお祭りや継承し続けたい文化があるので、地元を応援していく活動に、事業を通じて微力ながらお役立ちできればと願って試行錯誤しています。
今後も「お客さまの声によりそう」ことを大切にしていきたい

編集部:
最後に東北電力フロンティア光として今後どのようなサービスを目指していきたいかお聞かせください。
東北電力フロンティア 古関氏:
やはり、お客さまの声によりそうという部分は大切にしていきたいですね。
家計の固定費を抑えることだったり、快適な通信環境が必要だったり、そのようなお客さまのニーズに、サービスを通じて、お応えしていきたいと思っています。
東北電力フロンティア 田村氏:
サービスを提供するにあたり、「開通工事の予約が混雑しお待たせしてしまう」場面や、「インターネットの設定が分からない」などの部分をしっかりとサポートしていくことも、今後より重視していきたいと考えています。
東北電力フロンティアは、東北電力グループとして、東北・新潟の人々の悩みや求める声に耳を傾け、地域とともに歩みを進めている。
電力サービスとあわせて光回線のインフラとしての価値も高めつつ、家計の不安によりそうサービスや地域を盛り上げる取り組みなど、今後も東北電力フロンティアはお客さまの目線に立ったサービスを展開していくことだろう。
会社概要
名称:東北電力フロンティア株式会社
設立:2021年4月1日
代表者:取締役社長 武山 徳彦
本社所在地:宮城県仙台市青葉区花京院1-1-20
株主:東北電力株式会社
企画・取材・撮影 / ALL CONNECT MAGAZINE編集部
文 / 編集部 川口 沙織