スマートフォンは、いまや単なる通信機器ではない。
仕事探し、アルバイト応募、住居の契約、銀行口座の開設、クレジットカードの申し込み、行政サービスの手続き――あらゆる場面で「携帯番号を持っていること」が前提になっている。
SMS認証が必須となるサービスも多く、携帯電話を持てないことは、そのまま社会参加のハードルを上げることにつながっている。
一方で、過去の支払い遅延や端末分割の未払い、名義貸しなどをきっかけに、いわゆる“携帯の契約が通りにくい状態”に陥ってしまう人がいる。
また、クレジットカードがない、身分証を用意できないなど、事情が重なることで「契約したいのにできない」という壁に直面するケースもある。
そんな課題に対して、経済的に困窮している人も含め、携帯契約の選択肢を広げようと立ち上がったのが「だれでもモバイル」だ。
今回、オールコネクトマガジン編集部では、だれでもモバイルのサービス誕生の背景から、立ち上げ時に直面した“信用”の課題、ユーザー像、サポート体制、そして今後の構想までを伺った。

だれでもモバイル担当者
だれでもモバイル事業担当者 ※2026年2月25日取材時点
だれでもモバイル誕生の背景

だれでもモバイル株式会社は2023年3月より、だれでもモバイルを本格始動を開始した。
| 3項目 | 内容 |
|---|---|
| 運営会社 | だれでもモバイル株式会社 |
| サービス開始 | 2023年 |
| 契約回線数 | 50万回線以上(2026年時点) |
| 使用回線 | NTTドコモ回線(MVNO) |
| 契約審査 | なし【18歳以上、身分証があれば契約可能】 |
| 支払い方法 | 口座振替、コンビニ払い |
サービス誕生の背景には、生活困窮者向けに「何かできないか」から始まった、だれでもモバイル株式会社の想いがあった。
オールコネクトマガジン編集部本日はお時間をいただきありがとうございます。まず、だれでもモバイル誕生の背景や経緯についてお伺いさせてください。



だれでもモバイルは、経済的困窮者の方に向けて何かサービスができないか、というところから始まりました。
これまでにないサービスだったため、弊社としても手探りでスタートしたのがきっかけです。
もともと弊社は光回線の訪問販売を行っている会社でして、
その中で、審査が通らず契約できない方が多くいらっしゃり、まずはそうした方々へのヒアリングを行い、その内容が経営者会議で議題に上がりました。
さらに、弊社には別にメインの母体となるグループがあり、サブスクリプション事業を多数展開しています。例えば、ゴルフや家具、現在は携帯電話のサブスクなどがあり、それ以外にもおおよそ100社ほどのサブスク事業があります。
また、サブスクのEC事業に特化した決済システムも保有しています。
その中で、未払いの方や、そもそも審査に通らない方が非常に多いという課題があり、「なぜなのか」と掘り下げていく中で行き着いたのが、「携帯電話を持っていないこと」や「与信審査に通らないこと」といった点でした。
グループとしては、「この方は支払いが難しいため審査を通せない」といった信用情報を一定程度保有しています。
その情報を活かしたサービスとして、まず携帯事業が立ち上がった、という流れになります。



もともとやられていた事業のヒアリングの中で思いついた事業ということですね。
サービスコンセプトについてもお伺いできますか?



やはり経済的に困窮されている方々に向けて、より多くのスマートフォンを提供していきたいという思いがあります。
そのためにも、できる限り質の高いサービスを提供していきたいと考えています。
「すくい上げる」という表現はおこがましいかもしれませんが、そうした方々にしっかりと届くサービスを継続的に提供していくことが、私たちのコンセプトの一つです。



「だれでもモバイル」という名前は、その名の通り「誰でも」という意味が込められているのでしょうか?



そうですね。当初は別の名前で始めることも検討していましたが、やはり分かりやすい名称が良いのではないか、という話になりました。
その中で「だれでも」という言葉が一番コンセプトに合っているという結論になり、この名前に決まりました。
「困窮者向けの携帯」というテーマは、一般的な格安SIMの文脈とは少し違う。
その分、ニーズの読み取りや運用設計は難しかったはずだが、立ち上げ初期から想定以上に申し込みが増えていったという。



ニッチな市場になるのではないかという印象もありますが、リリース当初、実際の需要はどのような状況でしたか?



当初は、徐々に広まっていくのではないかと考えていましたが、想定していたよりも早いペースで伸びていった印象があります。
大手キャリアや一般的な格安SIMでは契約できない方が一定数いらっしゃるため、当初はニッチな市場だと思っていました。しかし実際には、決して小さな市場ではないのかもしれない、と感じています。
「審査なし」の裏側で最初にぶつかったのは“信用”だった


だれでもモバイルは「審査がない」ことを一つの特徴としている。
ただし、その言葉は誤解を生みやすい。
便利さの裏返しとして、「本当に大丈夫なのか」「怪しい会社ではないのか」といった不安が先行しがちだ。



サービスリリースまでのご苦労や、立ち上げ時に大変だった点があれば教えてください。



当時はこういったサービスはレンタルスマホぐらいしかなかったと思うんですよ。
番号は持てるものの、自分名義ではないというケースがほとんどでした。
その点、当社のサービスは「自分名義で携帯を持てる」という点が特徴でしたが、これまでになかったサービスである分、突然新しい選択肢が出てくると、やはり皆さま戸惑われます。
なので、やはり特に大きかったのは「信用」の問題でした。
まだ誰も知らないサービスなので、「本当に大丈夫なのか」と確認されることが多くあり、サイトを整備したり、サポート体制を充実させたりと、できる限りの準備は行いましたが、それでも当初は不安を持たれやすい状況でした。
「審査なし」という点はメリットである一方で、「誰でも受け入れちゃうんでしょ?」「怪しい会社なのでは?」という見え方にもなってしまうので、サービス内容をご理解いただき、信用していただくまでが最初の課題でした。
その“信用”の壁を越えるための工夫として、だれでもモバイルは著名人の起用も行った。
サービスサイトを見たことがある人なら、印象的なビジュアルとして記憶しているかもしれない。



信用の課題をクリアするために、具体的に取り組まれたことはありますか?



一つとして、ダンディ坂野さんをお迎えしようという話が出ました。
起用してから、そういった不安の声がなくなりましたね。
やはり芸能人の方が載っていると安心感が出るのだと思います。



ダンディ坂野さんを起用された背景や、その意図についてお聞かせいただけますか?



やはり知名度の高さと、一度見たら忘れない存在感が大きな理由ですね。非常にインパクトのある方なので、そうした印象に残る力は重要だと考えました。



起用後、お問い合わせ数や反響に変化はありましたか?



さらに増えたという印象があります。
もちろん、リリース当初は物珍しさもあってお問い合わせをいただいていた部分もあると思いますが、ダンディさんを起用してからは、それ以上に反響が大きくなったと感じています。
ターゲット層の中心は30〜50代、そして“契約が難しい事情”を抱える人たち
だれでもモバイルは「困窮者向け」を軸にしているが、申込者の背景は一様ではない。
年齢層としては、30代から50代が多い印象だという。



ターゲット層についてお伺いできればと思います。困窮者の方がメインかと思いますが、そのほかにも想定されている層があれば教えてください。



一応いろんな年代の方からお申し込みいただいているので、カテゴリーとしては困窮者なんですけど、審査がないのでいろんな方に向けられるのかなという気持ちはあります。
幅広い年代の方からお申し込みをいただいていますので、
主なカテゴリーは困窮層ではありますが、「審査なし」という特性上、特定の層に限定されるものではなく、色んな方に向けられるのかなという気持ちはあります。



実際にお申し込みいただいているのは、どの年代の方が多いのでしょうか?



30代から50代ぐらいが多い印象です。満遍なくいらっしゃるのですが、多いのはその年代ですね。
働いていらっしゃる方も多いです。
お金の面での困窮もあると思うんですけど、一度でもキャリアで傷がついちゃうとなかなか契約しにくいというのがあるので、そういった意味での経済的困窮者なのかなと。
契約が難しくなる事情として多いのは、「月額料金の未払い」「端末分割の未払い」「名義貸しなどの不正利用」、そして「クレジットカードを持っていない」ケース。
これらは、本人の生活状況や環境の変化によって、誰にでも起こり得るリスクでもある。



大手キャリアで契約しにくくなる理由として、どんなケースが多いですか?



一番多いのは、お金を払わない(払えない)パターンです。月額料金を払わない、端末の分割を払わない。
あとは不正利用(名義貸しなど)もあります。
それと、クレジットカードを持っていない方も多いですね。
また、担当者が「意外だった」と話すのが、身分証の問題だ。
免許証やマイナンバーカード、住民票などを持っていない・用意できない人が想像以上にいるという。



身分証がない方もいる、というのは驚きました。だれでもモバイルでは、本人確認はどのようにされていますか?



審査はないのですが、身分証の提出は必要です。
本人限定郵便でないと契約は進まないので、その担保として身分証の提出をお願いしています。
その身分証がない、というケースが出てきます。
外国籍の方についても、パスポートや在留カードなど、必要書類が揃えば契約できる旨が語られた。
差別化ポイントは審査のハードルを下げつつ「自分名義」で持てる
携帯が持てない人向けの手段として、過去には「レンタルスマホ」が想起されやすかった。
しかしレンタルの場合、「自分の番号を持っているけど自分の名義ではない」状態になりやすく、長期の生活設計と相性が悪い側面もある。
だれでもモバイルは、“自分名義で持てる”ことを価値として掲げている。



他社サービスとの差別化ポイント、独自性や強みとなる部分を教えてください。



やはり審査がないところだと思います。
価格は、一般的な格安SIMのほうが圧倒的に安いこともありますが、その分審査が楽で契約できる。
レンタルスマホに比べると、自分の名義で、レンタルよりは安く契約できていると思います。
“安さ”だけで比較するのではなく、「契約できる可能性」「自分名義」「相談しやすさ」など、生活の再スタートを支える観点で設計されている点が、だれでもモバイルの立ち位置といえる。
申し込み方法とサポート体制はWeb中心、役所経由のFAX申し込みにも対応
だれでもモバイルの申し込みはWebが基本。
ただし、端末が手元にない人や、役所の支援の中で案内されるケースを想定し、役所経由ではFAXでの申し込みも行われている。
チラシにFAX用紙を入れておき、役所側で記入して申し込める形にしているという。



現在のお申し込み窓口について伺いたいです。Web以外の申し込み方法はありますか?



Web限定ですね。あとは役所でFAXでお申し込みいただく形です。
また、問い合わせ窓口については、一般ユーザー向けには電話ではなく、メール・チャット・LINEを中心に受付。
一方で、BtoBや役所などは電話対応もしているという。
気軽さという意味ではチャット利用が多い一方、24時間対応ではなく営業時間内での運用となっている。



お客様サポートの体制について、問い合わせ先や窓口の規模感などを教えてください。



必要人数を揃えて対応しています。
電話は受け付けていなくて、BtoB系や役所系は電話対応もしていますが、お客様はメールやチャット、LINEで受け付けています。
問い合わせで多い内容は「審査は通りますか?」という申し込み前の不安。加えて、支払いが遅れてしまった人からの相談も多いという。
このあたりに、だれでもモバイルのユーザー像がよく表れている。
支払い方法は口座振替とコンビニ支払いが中心



お支払いは、口座振替とコンビニ支払いが多いのでしょうか?



そうですね。口座振替とコンビニ支払いが半々ぐらいです。
一般的な通信サービスではクレジットカードが前提になることも少なくない。
しかし、だれでもモバイルでは口座振替とコンビニ支払いの利用が多く、割合は半々程度だという。
支払い手段が理由で契約の選択肢が狭まる人にとって、この点は現実的なメリットになり得る。
データ容量が小さいプランが人気、でも使い方は人それぞれ
プラン別のユーザー属性については、「満遍なく選ばれている」としつつ、データ容量が小さい(=月額が安い)プランが人気の印象があるという。
生活費を抑えたい人にとって、固定費になりやすい通信費は特にシビアな領域だ。



プラン別のユーザー属性などはありますか?



満遍なく選ばれている感じはありますが、やっぱりデータ量が小さい方が人気なのかなという印象があります。
月額料金も安くなっていますので、選びやすいのかなと。
また、データ容量が少ないプランを「サブ用」に契約している可能性にも触れつつ、明確なヒアリングはしていない前提で語られている。
こうした慎重な言い回しからも、“誇張しない、事実を積み上げる”という運用姿勢が垣間見える。
「契約できること」だけでなく、「契約した後にちゃんと使えること」。
だれでもモバイルが、ここに投資していきたいという姿勢は、長く使うユーザーにとって安心材料になり得る。
「レンタルスマホのイメージを変えたい」クリーンに、一般向けの選択肢へ
だれでもモバイルの代表は、この領域が過去に「レンタルスマホ」中心で、反社会的組織の利用が多かったというイメージにも言及する。
だからこそ、一般的に利用できる携帯サービスとして、クリーンに運営していきたいという課題意識があるという。



だれでもモバイルを、どのようなお客様に使っていただくのが最適だと思われますか?



やっぱり携帯を持っていない人、というところが一番です。そういう方に携帯を持てるようになって欲しいというのが、もともとの願いです。
だれでもモバイルの今後の展望


格安SIMは、表面上は「ドコモ回線」「au回線」「ソフトバンク回線」と括られがちだ。
しかし、だれでもモバイルの代表である湖尻氏は、実務的には“回線の中身”が重要だと話す。
同じドコモ回線でも、どの帯域・どの経路を使うかで体感品質が変わりうる、という考え方だ。



お客様にとって「だれでもモバイル」がどういうサービスでありたいか」をお伺いできますか?



使いやすいサービスというのはもちろんですが、インターネットの品質が悪くならないように展開したいと思っています。
この業界は回線が3択の中で、さらにその中でどういった回線を使うかが結構重要だったりして、
うちは品質の高いところを使っているので、金額は少し高くなってしまうのですが、その分、品質は良く使える状態を担保したい。
そこを担保しつつ、速度が遅くならないように回線の帯域も増やしていきたいイメージです。
だれでもモバイルは、通信だけで完結するサービスではなく、生活の選択肢を広げる方向へも視野を広げている。
代表は「ユーザー数をもっと増やす」ことを掲げつつ、賃貸やクレジットカード、ポイ活など、類似サービスを増やしていきたいと話す。
すでに生活保護の方向けの物件サービスを展開しているとも述べており、通信を起点に支援の網を広げる構想がうかがえる。



だれでもモバイルとしての今後の展望や、PRがあれば伺いたいです。



願望としてはユーザー数をもっと増やしていくことです。
昨年の時点で当社が提供するサービスとして累計50万人を突破することができました。
今後はそれを更に100万人まで増やしていければと思っています。
それ以外でも、賃貸やクレジットカード、ポイ活など、生活保護の方や貧困層の方に向けてサポートできるビジネスを展開できればと考えています。
“携帯が持てる”はゴールではなく、スタートになる。
その先にある住まい・支払い・日々の買い物といった領域へ、どこまで寄り添えるか。
だれでもモバイルの今後は、通信サービスの枠を超えた取り組みとしても注目されそうだ。
今後の事業展開はポイントでデータ追加、将来的には支払いへの還元も視野
印象的だったのが、ユーザーの「マイページ」でポイ活ができ、ポイントでデータ容量追加などに交換できる仕組みだ。
湖尻氏によれば、最安の月額が「1,990円」程度のプランもある一方で、ポイントを貯めることで支払いへの還元など、より多様なリターンができるサービスにしていきたいという。



今後、新たな事業展開の可能性があれば教えてください。



事業展開の可能性で行くと、ポイ活系の強化です。
もともと今の状態でもやっていまして、マイページ内でポイ活ができるようになっています。
毎日ポイ活していれば、データ容量追加などが無料でできたりします。
今後は機能を拡充して、例えば最安だと月額1,990円ぐらいのプランを、ポイントで支払いに還元できるような形も目指したいです。



最近、物価高の影響でポイ活やっている方も多いので、また需要が上がりそうですね。
さらに、先々月ごろに実施したという“無料ガチャ”の例では、1/50,000の確率で10万ポイントが当たったユーザーもいたという。



先々月ぐらいに1/50000の確率で当たるみたいな無料のガチャをやっていて、10万ポイント当たった方もいるんですよ。
毎日そのポイ活やっていてくれれば、毎日続けるとほぼ確実で1GBは追加できるんです。そういう意味ではかなりお得なサービスというか、安く使っていけると思います。
今後は、Amazonギフトはちょっと難しいんですけど、何かしらサービスに交換、現金としてではないんですけど交換できるように整備していったりとか、今は月に頑張ってやって1GBぐらいしか追加できないんですけど、もっと増やせるようにしたいとか、拡充したいなという気持ちですね。



10万ポイントはすごいですね。ポイントはデータ容量に交換できるんですか?



500ポイントで1GBのデータ容量、というバランスです。
ポイントとデータの交換比率は「500ポイントで1GB」というバランスが示されており、10万ポイントという数字のインパクトが伝わってくる。
物価高が続く中で、固定費を少しでも抑えたいというニーズは強い。
だれでもモバイルが掲げる「携帯を持つ」だけでなく、「使い続ける」ための工夫として、この仕組みは今後の伸びしろになりそうだ。
代表は、将来的に“現金ではない形”で交換先を整備していく意向にも触れている。
最後に:検討者へのメッセージ



これからだれでもモバイルを検討される方へ、メッセージがあればお願いします。



誰でも携帯契約できるように、一緒に頑張りましょう!という感じです(笑)。
“契約できない”を前提に諦めてしまう前に、相談できる窓口がある。
だれでもモバイルのメッセージは、その一点に集約されているように感じた。
まとめ:だれでもモバイルは「契約の壁」に向き合い、生活の選択肢をつなぐサービス


だれでもモバイルの根底にあるのは、「携帯を持てない状態を放置しない」という課題意識だ。
審査が通りにくい、支払い方法が限られる、必要書類の準備が難しい――そうした事情を抱える人が、社会の仕組みから取り残されやすい現実がある。
インタビューで印象的だったのは、単に“契約できる”をゴールにしない姿勢だった。
信用の壁を越えるための工夫、役所経由の申込導線、チャット・LINE中心のサポート、そして回線品質を落とさない方針。
さらに、ポイ活によるデータ追加の仕組みや、賃貸・クレジットカード領域への展開構想など、生活の再建を支える周辺支援へと視野を広げている。
携帯契約に不安がある人にとって、「だれでもモバイル」という選択肢が、次の一歩につながることもある。
まずは自分の状況で何が必要になるのか、身分証や支払い方法、申し込み手段を整理し、相談しながら進めていくことが大切だ。





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